会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
文書作成日:2011/12/08



 近年、人に関するトラブルが多くの企業で頻発しています。こうした時代には経営者や管理職のみなさんも労働基準法を中心とした人事労務管理の基礎知識を身に付けておくことが不可欠です。そこでこのコーナーでは、経営者や管理職が最低限知っておきたい人事労務管理のポイントを会話形式で分かりやすく解説していきます。今月は、賃金支払い5原則を取り上げています。




 木戸部長は先日採用したアルバイトより、給与を銀行振込ではなく現金で受け取りたいという申し出を受けた。そこで、どのように対応すべきか、社労士に相談することとした。


 こんにちは。最近は寒い日が続いていますね。

 そうですね。この時期は体調を崩しやすくなりますので、体調管理には気をつけてくださいね。さて本日は、給与の支払いのことでご相談があると伺っていましたが、どのようなことでしょうか。

 はい。先日、アルバイトを採用したのですが、その者から給与を銀行振込ではなく現金で受け取りたいという要望を受けました。当社は全従業員について銀行振込としており、取扱いが煩雑となることからこの者についてはその申し出を断り、銀行振込で給与を支払いたいと考えているのですが、問題はないでしょうか?

 なるほど、そういうことですか。この場合、本人が現金での支払いを希望しているため、銀行振込を強制することはできません。そもそも賃金の支払方法については、労働基準法にその定めがあり、賃金支払い5原則というルールが設けられています。

  1. 通貨払いの原則
  2. 直接払いの原則
  3. 全額払いの原則
  4. 毎月払いの原則
  5. 一定期日の原則

 今回の要望は、1.通貨払いの原則に関わるもので、原則として賃金は通貨、つまり現金で支払わなければならないとされているのです。

 なるほど。当社では従業員から入社時の書類に、給与振込用の銀行口座を書いてもらい、その口座に振込をしているのですが、問題があるのでしょうか?

 はい、給与の銀行振込の取扱いについては、労働基準法施行規則第7条の2において、以下の2点を満たす必要があるとされています。

  1. 労働者の同意を得ていること
  2. 労働者が指定する本人名義の口座であること


 実際の流れとしては、あくまで銀行振込とすることの同意を得ておかなければならないということですね。分かりました。それではこの機会に他の原則についても解説して頂けませんか?

 わかりました。2.直接払いの原則とは、賃金を直接本人に支払わなければならないというものです。例えば、本人の家族を代理人として支払うことがよく問題になりますが、そのような場合であっても会社から代理人に支払うことはできないとされています。ただし、使者に対して賃金を支払うことは差支えない(昭和63年3月14日基発150号)とされています。次に、3.全額払いの原則とは、賃金支払いの際には勝手に会社が賃金の控除を行ってはならず、その全額を支払わなければならないというものです。ただし、社会保険料のように法令に別段の定めがある場合や労使協定がある場合については、賃金の一部を控除して支払うことができるとされています。

 労使協定が必要となるものがあるのですか?当社では、毎月、源泉所得税、住民税、雇用保険料、健康保険料(介護保険料を含む)、厚生年金保険料、その他に財形貯蓄や親睦会費を控除しています。

 源泉所得税等は、法令に別段の定めがある場合に該当しますが、財形貯蓄や親睦会費を控除する際には労使協定の締結が必要とされます。確か、以前、労使協定があるというようなことをお聞きした記憶がありますが、もしかすると、実態とあっていないかもしれませんので、念のため確認しておくとよいですね。

 そうですね。締結をしたかどうかも含め、早速、確認しておきます。

 最後に4.毎月払いの原則と5.一定期日の原則については、賃金を毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないというものです。例えば毎月25日に支払うという取扱いであれば問題はありませんが、毎月第3金曜日に支払うとした場合、月によって支払日が異なり、支払いの間隔が長くなることがあるため、このような取扱いは一定期日の原則に反することになります。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与等については、対象外となっています。



 なるほど。賃金は従業員の生活を支えていることから、このような原則が定められているのですね。ありがとうございました。


>>>次回に続く



 上記のとおり、賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うことが原則とされていますが、稀に従業員より給与を前借りしたいという相談があり、会社として対応に困ることがあるでしょう。このようなケースについては、労働基準法第25条の中で賃金の非常時払いという条文が定められており、労働者本人の出産、疾病、災害の場合と以下の3つの事由に当てはまる場合(労働基準法施行規則第9条)について、会社は前借りを認めなければならないとされています。

  1. 労働者の収入によって生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、または災害をうけた場合
  2. 労働者またはその収入によって生計を維持する者が結婚し、または死亡した場合
  3. 労働者またはその収入によって生計を維持する者がやむを得ない事由により1週間以上にわたって帰郷する場合

  また、前借りの金額については既往の労働に対する賃金とされており、会社としては既になされた労働に対する賃金の範囲で支払うことになります。



※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
お問合せ
砂森社労士事務所
〒709-1204
岡山市南区西高崎56-44
TEL:08636-3-9336
FAX:08636-3-9332